運動が嫌いな子ども達には、どのようなことに配慮して運動を指導していけばいいでしょうか?

 最初に運動が嫌いという意識が強く現れるのはいつ頃かを理解しましょう。女の子では、小学校4年生頃から運動が苦手や嫌いという意識の児童が急増すると言われています。男の子では少し遅くなりますが、やはり小学生の内には、このような意識は明確になります。一方、低学年の児童に聞くと多くの子どもが運動は好きとか、体を動かすのは楽しいと答えます。もちろん、この時期からすでに苦手意識を持ってしまっている子どももいるので、少しでも早期からの取り組みが必要ですが、特に、小学生の2~4年生ぐらいの時期は、運動を嫌いにさせないために大切な時期であると思われます。
 次に、運動が嫌いな子どもの心理的特徴や行動傾向について考えてみたいと思います。運動が嫌いな子どもの多くは苦手意識を持っています。そういった子どもは過剰な競争要素や、自分より明らかに上手な子達と一緒に運動をすることに大きな抵抗を感じ、苦痛すら感じています。行動面でも決して意欲的にはなれずに、遠巻きから友達が運動している様子を見ていたり、並ばせると後ろの方に並んだりといった傾向があります。これらは運動有能感や自己効力感といったものとの関係が想定されます。そのため、こういったタイプの子どもには成功体験の積み重ねが必要です。そこで用いられる方法がスモールステップによる指導です。いきなり、ゴールとなるような課題を見せるのではなく、目前の簡単な課題から徐々に取り組ませ、ちょっとずつ段階をあげていきます。仮に想定していたゴールまでたどり着かなくても、一つ一つの成功を評価してあげてください。また、時にはグループを分けて取り組むのも良いと思います。子ども達は案外、自分たちの発達状況や能力を冷静に理解していますので、自ら近い能力や発達の子どもとグループを組んで取り組むと思います。そうすることで、恐怖心や劣等感を少しずつ排除して、取り組ませることが大切です。10回褒めて、1回叱るか励ますかぐらいで行きましょう。
 いきなり難しいゴールを提示しないこと、そして、他の教科でも行うように、運動でも能力や発達段階に応じてグループ分けや段階的な課題設定が必要です。最後に、最も大切なのは「できた!」の瞬間の楽しさ伝達と喜びの声を引き出す指導を心掛けていただければと思います。
 

(回答者)
名古屋学院大学スポーツ健康学部
准教授 中野貴博