足が速くなるマシンって?

Q 今年の5月30日日本経済新聞の朝刊に「足が速くなるマシン」が紹介されていました。どのようなマシンなのですか。
A 「足が速くなるマシン」は20年ほど前に第1号機を開発しました。昨年4月に東京大学駒場キャンパスにQOMジム(体の動きの質:Quality of Motionを高める目的のジム)が開設されそこにも置かれています。
 
Q どのような成果がでているのですか。 
A 初めてフルマラソンを走った大学4年の女子選手が、マシンを利用して身に着けた無理のない走りでサブスリー(3時間以内)でゴールインしました。長距離だけでなく、東大陸上部の選手が、3カ月で100m11秒4から10秒85、ほかの選手が11秒0から10秒77、また追い風参考記録ですが10秒51という快記録を出しています。東大には10秒台ランナーが4人もいます。
 
Q QOMジムで足が速くなるということは、どういうことですか。
A QOMジムでは、体の深いところにあるインナーマッスルを上手に使うことができるような体の動きやバランス、柔軟性を高めるトレーニングをしています。インナーマッスルは、最近では大腰筋が有名ですが、いろいろな体幹深部の筋肉が協調的に動くことが大切です。
 
Q 幼児でもインナーマッスルを使った動きが大切なのですか。
A ハイハイからつかまり立ちをし、自分で歩き始める時期の幼児の動作では、両腕は比較的高く引き上げられ、足の運びと同じ側の腰と腕と足が同じ方向に動かされ、バランスがとられています。この足・腰・腕の動きは「同側型動作」の神経支配を受けています。同側型動作の神経支配は、インナーマッスルを使う際に有効な神経支配であると考えられます。乳幼児は、この「ハイハイ」や「四つん這いの運動」で無意識のうちにインナーマッスルが使っています。インナーマッスルを使った運動は、あらゆるスポーツや運動の基本要素を含んでいますので速く走るようになるためにも大切な動きです。
 

(回答者)
東京大学名誉教授 小林寛道