保育者の研鑽 ― 自分の保育実践を省察し、改善につなぐ

 

 新聞誌上では子どもの保育・教育に関連して、少子化、待機児童問題、保育士の処遇改善、幼児教育の無償化等々多種多様な話題が取り上げられているが、保育園および保育士等にとっての中心的関心および課題は、いかに「保育の質」を向上させるかである。
 これに関しては保育所保育指針には「保育者は、保育の計画や保育の記録を通して、自らの保育実践をふり返り、自己評価することを通して、その専門性の向上や保育実践の改善に努めなければならない」と示されている。(保育所保育指針第1章総則 3保育の計画及び評価)。園によってその取り組みの方法や重点の置き所に違いはあるが、筆者が参与観察や研修ほか、様々な関わりを通して見聞していることがらを紹介したい。
1.保育の記録
 日々の保育の記録は、主にふたつの視点からする。ひとつは子どもに焦点を当ててその日の生活や遊びのときの様子を思い返してみる視点、もうひとつは自分の設定したねらいや内容・環境の構成・関わりが適切であったかどうかを見直す視点である。子どもと保育士との多様な相互作用の様子が明らかになる。自分の保育実践を日々自己評価していく過程そのものである。
2.クラス掲示
 およそどの保育園、どのクラスにおいてもなされていることのひとつにクラス掲示がある。その日の活動の様子を文字媒体を通して掲示したり電子媒体を用いて保護者に発信したりしている。最近ではデジカメやスマホの普及に伴って、生活や遊びのなかでの子どもの様子を写真を用いて示し、吹き出しに子どもの言葉を書き込んで掲示している園やクラスがある。夕方のお迎え時までに仕上げなければならないので時間は限られているが、保育者間で写真の選択をしながら子どもの姿を話合い認識を共有するなど保育者はその日の保育実践を振り返ることもできている。保護者からも好評で、ドキュメンテーションとしての価値もある。
3.ふり返りや省察
 津守真は、「保育の実践と、実践の後に考える作業と、その両者を合わせたところに保育があ」り、保育実践に於ける体験は、時間をへだてて振り返ってみるとき意識化されその意味を問い直すことができると実践後の考える作業の意義を挙げる。
 遊びの変化や展開は傍からも見えやすいが、子どもの真の姿はそれほどには見えてこない。遊びのなかで子どもは何を体験しどのような育ちにつながったのか。ことばかけや環境整備は適切であったか。それらを振り返りその都度反省に考察を加える省察をすることを重ねてはじめて保育を理解し改善につなげることができるようになるのではなかろうか。
 保育とは、子ども、保護者、保育者が共に行う営みである。同僚、主任、園長、外部の専門家等が相互的な関係のなかで話合いや伝え合いが行われている園は保護者からの信頼も厚いようだ。子どもの発達理解、保育の知識や技能を土台にもち、子どもの思いを受止め、子どもの育ちのためにどのような関わりをするか等に、いま子どもが目の前にいなくても思いを巡らせることをしたいものである。
 「子どもとただ遊んでいるように見えても心は忙しく働いている」(津守)、そんな保育者が増えることを期待する。
 

池田裕恵