「ちょっとだけ好きなことをしてもいいよ!」
― 幼児の水泳指導から得たもの ―

 私は横浜にあるエンゼルスイミングスクールというクラブで水泳のコーチをしています。水泳指導の仕事に携わってもうすぐ30年です。幼児教育の出身ですので、一度は幼稚園教諭を経験しましたが、すぐに辞めてしまいました。子どもたちが自発的に遊ぶ大切さを学生時代に学び、それを実践したかったのですが、実際には上手く行かなかったからです。その後も子どもと関わる仕事を続けたくて、得意な水泳を生かし、水泳のコーチの道へと進むことにしました。
 現在勤務しているスイミングスクールの母体は藤が丘幼稚園という幼稚園です。保育の一環としてたくさんの園児たちが近隣の幼稚園や保育園から水泳を習いにやって来ます。水泳指導のはじめに、私は子どもたちに「ちょっとだけ好きなことをしてもいいよ!」と声をかけ、自由に遊ばせる時間を与えるようにしています。遊ばせると言っても、ただ単に好き勝手させる訳ではなく、安全面に気をつけながら、しっかりと見守ります。3分にも満たない時間ですが、ブクブクと潜り出す子、バシャバシャと水を掛けてくる子、ぴょんぴょんとジャンプをする子、その行動は様々です。長年、水泳指導の仕事を続けて来ましたが、最近になってこの時間の大切さに気づきました。自由に遊ぶ時間を与えるようになってから、子どもたちの水に慣れるまでの時間が格段に短くなったのです。かつては強制的に水に慣れさせる指導をしていたこともありましたが、今では遊びを上手く取り入れるようにしています。
 また近年は発達障害のある子も見受けられるようになり、幼稚園と療育センターとの通園を併用しているお子さんもいます。自分の指導経験だけでは対応できないこともあるため、横浜ラポールという障害者スポーツセンターに出向き、指導員の方に指導のポイントを教えていただくこともあります。幼少期から障害を持った子も、障害を持たない子も同じ空間で共生していくことは、互いが成長していく上で良い経験になると私は思っています。ですから私たち指導者は適切な言葉かけや環境作りができるように、日々勉強して行かなければなりません。
 今回幼少年体育指導士の認定講座では幼少年期の心やからだの発育、配慮が必要な子どもの発達など多くのことを学びました。この講座で学んだことを現場にフィードバックしつつ、これからも水泳の楽しさを子どもたちに伝えていきたいと思います。
 

エンゼルスイミングスクール
植松千鶴 (2017年度認定講座受講)