最近、園庭のないビル内の保育施設が増加していますが、
そのような環境で育つ幼児の体格が劣るとか、体力が低いというデータはありますか?

都市部では園庭を持てない保育施設が2~3割にのぼるという調査報告があり、今後もその傾向は増える可能性があると思います。日本では多くの保育施設で身長や体重という体格の測定(身体計測)が行われています。しかし、園庭がない、あるいは狭い保育施設の幼児で実際に体格や体力測定をして、園庭のある保育施設の幼児と比較した研究は今のところありません。身長や体重など体格を決定する因子は先天的な因子として遺伝、後天的な因子として栄養や環境、強いストレスなどがあげられていいます。後天的な因子にあげられる項目はいずれも望ましくない場合に身長を減少させる方向に作用します。ただ、体重は望ましくない場合に減少する場合と増加する場合があります。大震災後の子どもたちの発育に関する研究は日本だけでなく、他の国でもありますが、心理的ストレスと動けないことにより、身長は増加抑制が生じるのに対して、体重は増加する場合と減少する場合があります。こうした状況は極端な後天的因子であり、推測ですが園庭がないという環境因子はそこまでの影響を及ぼさないかと思います。保育中の身体活動量を調査して比較した報告はあり、施設内での身体活動量は園庭がある保育施設の幼児の方が多いという結果があります。しかし、最も身体活動量が多くなるのは施設外に出かけた日であり、それは園庭の有無にかかわらない、という報告があり、園庭がなくても安全な施設外の公園などに出ることで身体活動量は確保できると考えられます。また、屋内でも身体活動を活発化させる方法を準備することで活動量を増やすことは可能であり、保育士さんの取組しだいと言えるでしょう。


 
(回答者)
早稲田大学
教授 鳥居俊