めざせ、イッちゃん!

 我が家のお隣に住むイッちゃんは、実にアクティブな5人家族(両親と姉兄)の一員として、好奇心旺盛、運動能力抜群、感情豊かで、会話も達者な元気いっぱいの3歳4ヵ月の男の子。先日の朝のこと、外に出た私に気付いた途端、私がはめていた紺色の無地手袋について、「ワー! クボちゃんの手袋、フワフワがついててかわいい」と言ってくれました。
 これを聞いた私は、気を良くしながらも、一方で、元NHKアナウンサーの山根基世氏が、入局新人アナウンサーの特徴として語られたこんな話を思い出しました。最近の新人アナは、指示された話題についての話しは出来ても、初対面の人と雑談を介して関係性を作る力が未熟であり、つまり、その背景は、“雑談の経験がない”という指摘でした。
 私は、子ども達の身体の育ちに着目した研究を進めながら、保育者養成校の学生に向けて、便利さや効率化により身体機能を使わなくても生きていける現代社会の歪みを伝え、その打開策を問うてきました。しかし、この“雑談力未熟”の話題を鑑みると、今の高等教育に不可欠な課題とは、“学び”“身体/心”“就職”…という単体の課題対応ではなく、生活体験をせずとも青年期まで成長してしまう可能性がありうる現代社会の特徴をふまえ、若い世代(親世代も含む)に対する「再体験の場の保障(育ち直しの砦)」である事を再認します。
 今回の保育所保育指針、幼稚園教育要領、幼保連携型認定こども園教育・保育の改訂(改定)では、大人への啓発を目的として、「乳児期には一定の大人との関係性を充分に育み、幼児期にはあそびをとおして、他(者/物)との粘り強い関わり➡気付きの伝えあい➡喜怒哀楽の経験➡知る喜び」ことが強調されています。子ども達と保護者を支えていくべく保育者を養成する者の一員として、新入生を迎えるこの時期、例えば、トーキングゲーム等も活用し、会話/遊び/学び/を含む学内のあらゆる機会を利用しながら、学生の気付きを促し全面発達を応援したいと思っています。
 

和泉短期大学教授 井狩芳子