幼少年の「身体活動、体力、認知機能、学力」の相互関係について

 文部科学省は平成24年に「幼児期運動指針」を示した。指針の骨子として、「幼児は、さまざまな遊びを中心に、毎日、合計60分以上、楽しく体を動かすことが大切である。」とされている。また、幼児期の運動効果として、「体力・運動能力の向上」、「認知的能力の発達」、「意欲的な心の育成」、「健康な体の育成」、「社会的適応力の発達」が挙げられている。
 幼児には遊びが大切だということは、誰もが認めている。しかし、「遊び」といっても、その内容は多岐にわたっている。幼少年体育指導士会は、科学的な視点にたって、子どもたちが体を使った遊びや運動、身体活動を楽しく実践できるような指導者の育成を目指している。
 子どもの運動や身体活動と、認知機能や学力の発達の関係について、学術的な興味も世界的に高まってきている。アメリカスポーツ医学会(ACSM)では、2016年6月に「見解(Stand Point)」として、「子どもの身体活動、体力、認知機能、学力:総合的文献レビュー」を発表した。このレビューは、5歳から13歳の子どもについて、①身体活動や体力が認知、学習、脳の構造、脳機能に影響を持つかどうか、②身体活動、体育、スポーツプログラムが基準化された達成テスト、集中力、注意力に影響するかどうか、という疑問に答えることを目的とし、英語論文168編をレビューしている。
 その結果、多くの研究結果が、体力、単発的な身体活動、身体活動の介入は、子どもの認知的機能に有益であるという見解を支持し、身体活動が学習に効果的であるとしている。身体活動と体力、認知的機能、学力とは正の関係がみられるが、今後、さらに研究が進むことが必要であるとコメントされている。
 

東京大学名誉教授 小林寛道