発育・発達への科学的アプローチ
―発育・発達と健康の身体情報科学―

藤井勝紀著 
三恵社
 
 本著は序章を含めて5章で構成されているが、その中でも後半の4章および5章に大きな特徴を見出すことができる。発育発達に関する研究領域は、当然のことながら生理学または保健衛生の学問的な知識を基にして正常と異常の判断を中心に発展してきたものと考えられるが、本著者はここに数学的なアプローチを試み、その成果を上述した2章に亘り解説している。現在に至るまで発育発達の研究は、観察的な手法を基にして大まかな段階を示す事が主となっているが、著者は種々の時系列データに数学関数を適用させることで得られる滑らかな発育発達曲線によってデータを可視化させ、そこから得られる詳細な成長の速度または加速度を基に科学(数学)的に成長期を定義することに成功した。これにより、発育現象のパターン化と最終章で解説されているような女子の精密な初経遅延判定システムが構築されている。本著は、発育発達現象を科学的に評価する手法および判断基準が多く示されており、今後の研究または臨床への応用をサポートする名著である。
 
愛知県立芸術大学 教授 石垣享