子どもたちはどこでボール遊びができる?

 東京23区内の住宅街にある保育園に出かけたときのこと。その保育園は園庭が狭いので近くの公園に出かけて外遊びをするのだが、ボール遊びをしたくてもなかなかできないとおっしゃる。
 理由は、ボール遊びが禁止されているからだそうだ。20m×32m程度の小さな児童公園の入り口に、看板1枚と立て札(写真1)1枚が据え付けてある、それではまだ徹底しないとでも区は考えられたのか、壁面に掲示板(写真2)も1枚ある。

 
 
 区の窓口に電話で問い合わせもしたそうだ。しかし、どんな大きさのボールも、どのような材質のものもダメとの回答。幼児が使う小さく軟らかいものもダメなのだ。区の条例にはボール遊びを禁止する条文はないが、公園利用における禁止行為として「危険のおそれのある行為又は他人の迷惑となるような行為をすること」があるので、これが根拠となっているということなのだろう。

 窓口の職員は小学生のキャッチボールやボール蹴りと乳幼児のボールを用いた遊びを一括りにして画一的にダメと回答したのかもしれない。体調が優れず休養している人や夜勤明けで寝ている人たちにとっては迷惑かもしれない。クレームが入ると区ではその人の声も聴かなければならないのだろう。
 しかし、「ボール遊びはダメ」「大きな声を出してはダメ」では、保育士や乳幼児を持つ親は萎縮してしまう。高齢者向けに設置された「健康器具」もあってよいが、子どもはいったいどこで遊べるのか。
 自治体の一部では「ボール遊び容認」の動きも出ている。ただし期限を切っての「実験」であったり、一部の公園で回数や時間を制限しての「許可」だったりである。
 子どもにとっての体を動かして遊ぶことの重要さや子どもを育む環境の是非を認識している研究者、指導者などが声を上げなければと強く思う。
 

代表理事 池田裕恵