遊びはからだと心の休養です

 18時過ぎの保育園からの帰り道、疲れてぐずる子どもに少しのおやつをあげたり、歌を歌ってみたり、応援したりしながら何とか自宅まで辿り着いた途端、荷物を放り出し遊びだす子ども。その姿を見て「ここまでの道のりは何だったのかー」と思った経験は、働きながら子育てをする親の多くが経験するのではないでしょうか。私もそのような経験をした一人です。
 遊びは子どもにとって何かを育む目的があるものだけではなく、好きなことに好きなように向き合うことで心の休養をするものでもあります。帰宅した途端の遊びは,まさしく休養そのものなのです。
 子どもの権利条約第31条では、「休息及び余暇についての児童の権利並びに児童がその年齢に適した遊び及びレクリエーションの活動を行い並びに文化的な生活及び芸術に自由に参加する権利を認める」と、休息・余暇・遊び・レクリエーション・文化的生活・芸術が並列に記述されており、休息と遊びは同じように権利が保障されています。「遊びは子どもの主食です」「遊びが生きる力を育む」など遊びの重要性は謳われているものの、遊びの貧困が叫ばれていることも事実です。遊びが保障されないということは、休養さえも保障されなくなっているということになります。何かに一生懸命取り組むことが求められる現代の子どもこそ、気の向くままに遊ぶ時間が確保されなければ、からだも心も疲れ果ててしまうことは明確です。
 白い線の上だけを歩いたり、日陰だけを辿ってみたり、曲がり角ごとにジャンケンをして方向を決める町探検をしたり、ミニカーや人形を並べては動かしてまた並べたり、といった大人が見れば意味のない活動にも子どもには意味のある時間であり、活動であるということ、その時間を保障するのは大人の責任であるということを理解し、広く浸透していく必要があるのです。
 

洗足こども短期大学教授 石濱加奈子
(2011年受講)