遊びは子どもの元気の源

 とある病院の小児病棟。移植病棟で治療を行っていたA君が2ヶ月ぶりに戻ってきました。顔色のすぐれない6歳のA君に「このおもちゃで遊んでみる?」と声をかけると「うん」と頷き、車椅子から下りてプレイルームで遊び始めました。
 最初はだるそうな様子でしたが、「これ、凄く面白い。こんなおもちゃでずっと遊びたかったんだ。」とパチンコ玉をはじいて相手の船を倒すゲームに夢中になりました。両親は、移植治療に入ってから狭い病室でしてはいけないことばかりで本人のストレスが溜まって笑わなくなっていたのに笑ったと喜んで写真を撮っていました。
 治療のために食事が出来ない子どもがおままごとで食べたふりをしながら遊んだり、お医者さんごっこ(写真)をしながら「痛くないですよ~」とお人形に自分がされたように聴診器をあてたり注射をしたりを繰り返す、友達同士でカードゲームをしながら治療の話をして励まし合うなど病院ならではの子どもの遊びもみられます。
 入院している子どもにとっての遊びは、子どもの発育・発達を促すだけでなく、気分転換、ストレスの発散、子どもの状態の把握、感情を表出し自分らしさを取り戻す、病気や治療に対する理解の促進、されることの多い病院で主体的になれるなど様々な意味があります。そのことが子どものこころとからだを支え、病気の子どもの健康な部分を引き出します。「辛いことも嫌なこともあるけど明日も頑張ってみよう」と遊びが子どもの元気の源となって明日に繋がっていきます。
 

 
東洋英和女学院大学 准教授(病児・病棟保育論)金森三枝